虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「Mr.&Mrs. スミス」

toshi202005-12-03

原題:Mr. & Mrs. Smith
監督:ダグ・リーマン


 旦那は言った。


 「ジェーン、話し合おう」



 落ちていく車の中から。




 ある夫婦の物語。
 裕福、互いに容姿端麗、頭脳明晰。理想のカップルに見えても、倦怠期はゆっくり訪れていた。



 5年前。もしくは6年前。2人は異国の都で出会った。互いの「謎めいた」「ミステリアス」な雰囲気と「普通じゃない」身のこなし。あっという間にひかれ合い、恋に落ち、結婚する。だが、その互いの「秘密主義」が5年、もしくは6年続くと、やがて熱情は冷え、形だけの夫婦関係が残る。カウンセラーに相談するも、二人の関係に変化はなかった。
 だが、やがて、彼らが「本音」をぶつけ合う出来事が起こる。遂に彼らは互いの「秘密」を知ったのであった。


 2人は「殺し屋」だった。ただし、敵対する別組織の。


 というわけで、あくまでも冷えきった夫婦の関係とその修復までを描いたシチュエーションドンパチコメディアクションである。はずである。なんじゃないかな?
 いや、そういう眼目で作られているはずなのだ。少なくとも脚本上では。「殺し屋」夫婦同士の、「語り合い」は「殺し合い」、という目論みはクールなんだが、だが、どうも監督のダグ・リーマンはそういう眼目とアクション演出を分けて考えているのか、盛り上げようと話が進むたびにアクションを過剰に演出していく。要は、ブラピ×アンジーという、2大怪獣、じゃない、スターのお祭りさわぎとしてガンガンに囃し立てていくわけだ。


 前半の語り口が見事だっただけに、後半のバブリーな火薬量は正直、「えー」って感じ。もうちょいクールに演出できなかったものか。ジェームス・キャメロンじゃないんだから・・・。「ボーン・アイデンティティ」で見せたリアル演出で言っても、十分に盛り上がったはずなので、正直サービス過剰なんじゃなかろうか、と思った。
 お祭りさわぎのプロットとしてはいささかこぢんまりとしているし、かといって、夫婦の物語としては、いささか後半の戯画化が過剰過ぎて、観客の共感能力を超えてしまう。物語と演出が噛み合ってこそ、盛り上がった話のはずなので、そのリアルと虚構のさじ加減を誤った感じが実に惜しい作品と思った。(★★★)


公式サイト:http://www.mr-and-mrs-smith.com/