「SHINOBI」
原作のことは、あまり考えずに見た。
そうやって見れば、つまらなくはなかった。思ったよりは。
山田風太郎の、時代小説ファンどころか、漫画、アニメファンにまで、その面白さが浸透しきったこの原作を、完全再現する才気はないと見切っての、言わば「逃げ」の映画化。ただ、そういったものと割り切ってみれば、まあ、楽しめなくはない。
つまるところ、どのような異国感を出しながら、オシャレ系映画に仕立て上げるかが、この映画の眼目であり、女性に受けないような展開は極力排除されていて、ここまで徹底されると、逆に清々しい。言わば、登場シーンの優美さには固執するが退場はあっさりしているキャラクター演出に、それは見事に現れている。
しかし、この、語るべきものもなく、ただただ、濃い物語を思いっきり水で薄めて、奇麗に彩っただけのこの映画に特に感慨もない。オシャレな滑降した魂のないマネキンを見て、感動しないのに似ている。俺はそういう映画は求めてない。(★★☆)