虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「アラハン」

toshi202005-10-23

監督・脚本:リュ・スンワン
 
 面白いじゃん*1


 いや一部でひどい出来という話題*2だったのだけれど、これは及第点以上じゃないか。まあ、韓国人嫌い、とか、香港映画ノリって嫌い、って言う人に無理に勧めるほどではないんだが、カンフー映画の基本は出来てるし、アクション演出も以前みた「火山高」なんかに比べたら、明らかに洗練されてきてる。逆に、韓国のプログラムピクチャーのレベルがあがっているとさえ思ったよ。今、こういったアクションを撮るのは、日本で言えば北村龍平だろうが、あいつに比べりゃ格段に上だよ。

 以前、某掲示板で、韓国映画に足りないのはチャウ・シンチー(的感性)、という話題があってなるほどと思っていたのだが、これは星爺的作品が生まれる萌芽じゃねーかと思った。つまり、この映画、韓国版「カンフー・ハッスル」なのだ。こういう映画が出てくるあたりが、韓国娯楽映画の層の厚さなのだと思う。


 ただ、作ってるのが「韓国人」なんで、その辺のカンフーへの愛情はやや屈折している。主人公は、頭が足りなくて、警官のくせにいささか根性がねじ曲がってるわ、行動はいやしいわで、感情移入はしづらいし、人になじられたりいやなことがあると、すぐに逆ギレする。その逆ギレがパワーの鍵だったりするんだがw、正直友達にゃあなりたくない。愛すべき主人公を創造できない辺りが、韓国人だなあ、とは思う(オイ。その辺が、チャウ・シンチーとの決定的な差なんだが。

 ただ、そういった未熟な若造を導くのは、韓国映画のオヤジ的存在アン・ソンギ。さらに「シュリ」でアクション監督を務めたチョン・ドゥホンをラスボスに配役*3するなどの、目配せは見事。ラストのアクションもちょっと長いんだが、見せ方はさすがだし、ドゥホンの肉体美もほれぼれする。


 こういった映画がきちんと興行的に成功している、という方が驚きで、これからの韓国映画の流れになるなら、歓迎すべきことだと思ったよ。見ずに侮るなかれ、だ。(★★★)


追記:あとパクリがどーのこーのは、日本人が言うべきじゃねーよ。戦後の日本文化が他国文化の模倣の固まりなのは自明じゃねーか。むしろ、率先して面白いものを取り入れようとしている姿勢は、見習えと思う。今の日本映画に足りないのは、むしろ浅ましいくらいの吸収力だと思う。そういう姿勢が結果的に表現の幅を広げるのだ。


公式ページ:http://www.arahan-movie.jp/

*1:ちなみに字幕版で鑑賞。劇団ひとりが吹き替えて・・・微妙。

*2: まあ、あの自称批評家の言うことなんざ信じちゃいないし、あいつがダメダメって言う方にお気に入りの場合が多い。

*3:本作のアクション監督も努めてる