虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「チーム・アメリカ/ワールドポリス」

toshi202005-08-20



公式ページ


 「『パール・ハーバー』は糞さ。ああ、君に逢いたい。」


 トレイ・パーカー監督とマット・ストーンの「サウスパーク」コンビが描くのは、テロ撲滅のために奔走する警備組織チーム・アメリカの戦いの日々を描いた人形劇である。

 これがですね…、面白いんですよ!!面白すぎる。はっきり言って、爆笑に次ぐ爆笑。操演技術もさることながら、アクションシーンの演出・編集も見事で、しかも歌がまた実にばかばかしくってくっだらなくて最高。
トレイ&マットはこの作品で新たなる地平を切り開いたのではないかと思うよ。 彼らがお手本にしたのがブラッカイマー映画と聞いたときはなんじゃそりゃ、と思っていたが、その意図がよく分かった。ブラッカイマーの映画はIQを必要としない。考える必要がない。彼らが最終的に作りたい作品というのは「そういう」作品だった、ということである。


 たとえば開幕でパリの平和な風景が、テロリストとチームアメリカのドンパチで破壊されていく。戦闘後、破壊されつくした街をバックに「みなさん安心してください。テロリストは消え去りました」うんぬんいうチーム・アメリカをうさんくさく見つめるパリ市民、というギャグ。これは言わばアメリカのやり方を茶化したものだ。うん、これはアメリカを皮肉った映画だな…、とか思っていると、しばらくするとチーム・アメリカを批判を繰り返すリベラル俳優たちが軒並みコケにされている。*1
 つーかこれはどういう映画?
 …とまあ、とまどう向きもあるだろうが、べつにこの映画、言うべき主張など、はなからないのである。だから、この映画、深く考えていては楽しめない。標的になっているのは彼らの感覚で「うっさんくっせー」と思ったやつらで、そいつらを並べて端から馬鹿にしているのである。文字通り。彼らと親交のあったマイケル・ムーアだろうが、ジョージ・クルーニーだろうが容赦はしない。
 で、有名人以外で出てくる登場人物といえば、馬鹿、薄っぺら、頭悪い。男も女も、総じてIQ低そう。下品なギャグももちろん健在で、バイオレンス&セックス描写にも遠慮がない。しかし、言うまでもなく確信犯。だからこそこの映画は何も考えずに笑い飛ばせるのである。

 「どうせこの世は馬鹿ばかり」(byクレイジーキャッツ)。

 笑いに笑って、笑いつくして、しかも見終わった後はブラッカイマー映画のごとく何も残らない。だけど、そこで過ごした時間は間違いなく充実している。毒満載でありながら、観客の心にはなにも残さないエンターテイメント。豊穣なるポップコーン。それこそがトレイ&マットの目指したものだろうと思うのだ(★★★★)

*1:マット・デイモンなんてひど過ぎ。自分の名前をひらがなでしゃべるだけ。ジェイソン・ボーン捕まえてなんてことを(笑)。