虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」

toshi202005-07-11



公式ページ


「同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人間も同じ。特殊化の果てにあるのは緩やかな死…。それだけよ。」草薙素子GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」)


 エピソード3を再見した。


 こうして全エピソードが明らかにされたうえで、改めてこの物語について考えると、この物語は非常に青臭い男たちの話なのだなあ、という感慨が浮かぶ。新三部作が悲劇へと向かうのは、ジェダイ騎士団という組織が抱えていたひずみと大きく関係していると俺は思う。


 ジェダイは、そもそも暗黒面と表裏一体な存在でありながら、暗黒面に堕ちていく要素を自ら切り捨てることで長く共和国の中枢で一定の位置に座ることができた。(なんか宦官みたいだよねって話はおいといて)ジェダイは共和国において一定の信頼を得るための「善」や「格式」にこだわるあまりに、暗黒面自体が彼らの「恐れ」となっている。その組織としての恐れが、アナキンへの「疑念」となり、その「疑念」が彼をパルパティーンへと傾倒させる一因となっている。アナキンが暗黒面へと堕ちる過程で、組織としての「恐れ」こそがアナキンを悪へと追い込んだというのは皮肉な話である。(オビ=ワンがジェダイ評議会が抱える政治性に疎かったのも不幸だった)
 「疑念」は時に「不信」を生むのである。


 ジェダイ騎士団は実際のところ、特別警察みたいな色合いが濃く、戦争にも借り出されてはヨーダまでが嬉々として暴れまわっているわけで、彼らはそういう武闘派の一面を併せ持っていることは否定できない。政治的色合いを持たないという大義名分を持つことで存在を黙認されてきた武闘派の彼らが、パルパティーンへの疑念から議会を(一時的にしろ)掌握しようとした時点で、彼らは確かに民主主義への「反逆」と言われても仕方がない要素を持ち得てしまった。そうなると、思惑がどうであれ、パルパティーンは政治的にはジェダイよりも遥かに正しく、ジェダイ討伐の大義名分を獲得できるわけである。なによりもアナキンが抱えていたジェダイへの「不信」をより決定的にしてしまったのは痛かった。
 アナキンよりも先に暗黒面に堕ちたのは、組織としてのジェダイ騎士団ではなかろうか。


 実は一番のジェダイ・ロードはパルパティーンではないかと思う。彼の忍耐力は恐れ入る。彼は暗黒面に堕ちていながら、実際には善の面と悪の面の境界線を長きにわたって渡り歩いてきたわけで、その精神力はアナキンが一気に悪に転じたのとは対照的。ある意味(最高議長時代の)彼は、暗黒面を恐れるジェダイよりも遥かに正しい位置にいた。持たざることで恐れを消そうとしたジェダイたちよりも、実ははるかに深く、力を制御していた。



 彼が帝国を作り上げたのはその「制御」を必要としなくなる国を作るためだとしたなら、本当に彼はよく耐え、そして待った。今回の悲劇は、ある種必然であり、たまたま時が満ちたに過ぎない。その後20年ほどで帝国は亡くなってしまうわけだが、パルパティーンという男、実はヨーダダース・ベイダーよりも遥かに傑物だったのではないか、と俺は思うのである。そういう男に対して彼らはあまりにもストイックすぎた。「恐れ」を生むことを「恐れ」ている彼らは、暗黒面を秘匿する精神力を身につけた男の前ではあまりにも個々人が青く、そして組織は脆かった。
 だからこそ、後世の人々にとって、彼らの儚さは魅力的であり、パルパティーンの強さは憎まれるのかも知れないが。