虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

この世の中心で恋を唄う男、you know?

toshi202005-05-17



 「バタフライ・エフェクト」を見た。


 バタフライ・エフェクトつーのは、カオス理論(予測できない複雑かつ不規則な様子を示す現象についての理論)を分かりやすく説明した言葉。「北京で蝶が羽ばたけば、ニューヨークで嵐が起こる」という例えで、日本語で言えば「風が吹けば桶屋が儲かる」という落語のネタと、基本的には同じ。


…なんですが、まあ要はアドベンチャーゲームエロゲーで言うところの「ールート」「-エンド」を選んでいく男の話。人生の中のある結節点で人生を選択できる能力を持っている男が、自殺した幼なじみの女性のために何度も人生をやり直し、並行世界に迷い込む。


 まあ、話の構造自体は良くできてるし、いい話っぽくまとまってるんですが、俺にはなんだかなーという感じ。某エロゲーじゃあるまいし、やり直しができねーから人生じゃん。あのオチは、俺にはいささか傲慢に感じる。彼が見てきた人生にだってそこに生きる人間が居て、世界があるわけである。そいつらの存在は完全無視かい。彼の選んだ「並行世界」にいることでベターな選択をしたつもりなのかもしれないが、彼がみた「世界」たちは今も存在し続けているのだ。彼が不用意に生み出した並行世界の堕ちた彼女も、犯罪者となった親友も、死んでいった人々も、今もどこかの世界で存在し、喪われた者と関係していた者は苦しみ続けている。


 その罪を彼は感じぬまま、彼はその世界で生きる。彼の中ではなかったことになっていても、今も存在しつづけている奴らこそ、犠牲者だ。だったら、過去の罪も、自らが引き起こした自殺への呵責も、引き受けて生きていくしかなかったはずなのだ。(★★★)