虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

阿修羅のごたく

toshi202005-05-16



 気になっていたんだけど、後回しにしてたら公開が終わりそうだった「阿修羅城の瞳」をようやく見る。


 この外連の強い世界観はなるほど面白かった。いや、面白かったんだけど、映画としてはどうか。戯曲としての面白い世界観が、映画としては世界の広がりを拒んでしまう。舞台版のファンには文句ない出来映えではないかと思うけれど、映画としてはいささかざっくりしすぎて大味。まあ、大味だからこそ面白い話だからな。映画化としての取捨選択は間違っていないし、滝田監督の生来の下品な絵づくりが物語にあってるとは思う。


 あとはキャスティングかな。市川染五郎はつくづく舞台向きの俳優なのだなと思った。主人公の出門は元鬼殺しで今は歌舞伎役者という実に破天荒なキャラクターで、そういう男の波瀾万丈の恋物語なのだけど、染五郎はいさかか上品さがにじみ出ちゃうんだよね。舞台ならば、その上品さも凛々しさに繋がりプラスになるんだけど、映画の場合、その立ち居振る舞いの綺麗さがキャラクターにマイナスに作用してしまう。出自の汚さがにじみ出た方が物語にリアリティが出たはずだ。


 そういう意味では中村獅童あたりが演じた方が、もちょっと下品に面白い作品になったかも。ただ、こういう作品は嫌いじゃない。宮沢りえはかなり良かったし。はだけた背中があそこまでセクシーな女優は最近なかなかいない。時代劇女優としての新たな一面を開拓したと言う意味でもなかなか良かったのではあるまいか。(★★★)