虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

竜虎、相噺す。

toshi202005-03-16



 ♪俺の噺をきけー、5分だけでもいいぃー♪


 という歌が耳から離れません。…てなわけで、こないだ、今年1月に放映されたクドカンこと宮藤官九郎スペシャルドラマ「タイガー&ドラゴン 「三枚起請」の回」DVDを買ったので、見た。


 おもしれえ。クドカン、久々に会心の出来じゃないか?


 今回は古典落語をフィーチャーしたオリジナル脚本。
 面白い話が出来ないことがコンプレックスになっているヤクザの虎児(長瀬智也)は、組長と親しい落語家・林家亭どん兵衛が借りた400万円を取り立てに行った際、どん兵衛を追いかけて寄席に入った時に彼が演じた「三枚起請」の噺に魅せられ、弟子入りを志願する。噺一本で10万円の借金肩代わりする条件で弟子入りを許されるが、元々話下手なのでセンスはない。無理矢理出た高座で客にどん引きされて、寄席を空にする始末。
 どん兵衛の奥さんに、どん兵衛が唯一「三枚起請」を教えたという元弟子の居場所を教えてもらった虎児はそこへ向かう。そこは、裏原宿に店を構えるファッションショップで、虎児は竜二(岡田准一)という若者と出会う。そして彼こそが、「三枚起請」を師匠に教えてもらった元弟子、そしてどん兵衛の息子であった。


 小ネタとキャラクター立ての巧さは相変わらずだが、古典落語というかっちりとした世界をフィーチャーしただけあって、そこに一本ぴしっとした背骨が入ったような感じがある。今回の話は言ってみれば「三枚起請」の現代版なわけだれど、きちんとクドカンなりに落語をかみ砕き、自分のセンスで現代に置き換える、というクドカンが高い評価を受けやすい脚色家としてのプロセスをやってるせいか、突飛な小ネタでも話の軸がぶれない。
 クドカンのネックである「構成力」も、今回は春風亭昇太演じるどん兵衛の二番弟子、どん吉の新作落語という開幕から始まる構成で、それがまた粋だ。


 クドカンの「遊び」は話に勢いを付けやすいが、逆に話を大きく逸脱させることもある。だが、本作では上手いことそれが話に勢いをつけて、飽きさせないシナリオに仕上がっていると思う。
 あと金子文紀演出も、いい。師匠筋の堤幸彦の大げさな寄せやオーバーリアクションを引き継ぎながらも、ナチュラルに抑えるセンスがあるせいか、池袋ウェストゲートパークなどよりも、落ち着いて見られる。


 春から連続ドラマ化されると言うんで今から楽しみだけど、一週古典落語1話というペースだと大変そうだな。2回で古典落語1話、という位がちょうどいいのかな。