「ステルス」
原題:Stealth
監督:ロブ・コーエン
いやあ、開幕シーンから気合い入りまくり。ロブ・コーエン、はなから飛ばしまくってます。
近未来、という時代設定を持ち込んであり得ないスピードで描かれる、ありえねードッグファイトシーンは、もはやアニメだ。そのセンスは宮崎駿に匹敵する、と本気で思ったね*1。ぐわんぐわんカメラを動かしながら、快感すら呼び起こす、その映像は必見。すげえすげえ。こうなったら、コーエン監督には飛行シーンを極めてほしいよ。
で、ストーリーだけどね。うん。アニメだね。うん。
前半部はけっこう好きなのよ。高度なコンピューター技術が生み出した、自立型無人戦闘機に、自分たちの立場が危うくなり、主人公たちトップガンたちが抱く焦燥を、しっかり描いてるしね。人間とコンピューターの違いを端的に示していくタイのバカンスシーンなんかは、結構「いいじゃん」って思った。オーバーテクノロジーで自我を持ち始めた無人ステルス、という設定も面白いと思う。
だけど、そこまでしっかりお膳立てしながら、後半積み木崩しのごとく崩れていく。後半部、書いたの別人じゃねーの、ってくらい、低次元で幼稚な話になってる。
自我に目覚めて暴走する「エディ」くんの思考は、しつけの悪い幼稚園児に近い。任務の最中、標的の近隣諸国に、その累が及ぶと判明し、任務を中止しようとした主人公からの命令を無視し、任務を遂行。結果、近くの村に放射能の灰が降り注ぐ。おいおいおい。
エディはそんな彼を理解し「助けたい」がゆえに止めようとしたヘンリー(ジェイミー・フォックス)のステルスを破壊、ヘンリーは死亡してしまう。アカデミー男優を使い捨て。贅沢すぎて涙が出る。
空母に帰還する途上で、北朝鮮に墜落して逃避行を始めるヒロイン(ジェシカ・ビール)と、親友を殺したステルス「エデイー」くんと仲良くヒロインを救いに行く主人公(ジョシュ・ルーカス)を見るに及んで、いよいよ笑えなくなる。ジェイミー、死に損か。
「今行けば、戦争になるぞ」という至極ごもっともな空母「リンカーン」艦長の言葉を無視して、私的感情でがんがんいっちゃうマッチョ主人公。国内をウロチョロする米兵士であるヒロインを排除しようとする、至極当たり前のことをしている北のチョッパリ兵士を皆殺し!ひゃっほーい!
…ってあほか!!てめえら、そんな理由で、極東を火の海にする気かクソ野郎。マッチョ過ぎてゲロはきそう。そんなクソ展開を剛椀でラストまでもってくコーエン監督はさすがなんであるが。その剛椀に免じて、★3つキープで。(★★★)