虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「銀河ヒッチハイク・ガイド」

toshi202005-09-18



公式ページ



 人類は地球上で最も知能が高いと思っていた。愚かにも、自分たちが3番目とも知らずに。


 「銀河ヒッチハイク・ガイド」を見た。原作は未読。


 この映画最大の白眉は、数々の特撮ではなく、冒頭のイルカ(地球で二番目に知能が高い生物)の歌だと思う。これほど、阿呆で間抜けで呑気で陽気で、そして皮肉な歌もなかろう。この歌を聴くためだけにでも、木戸銭払う価値はある。

 で、物語はってーと、イギリス人のボンクラ的妄想を全宇宙レベルにまで広げてしまった、スペースオペラ風ギャグSF。


 主人公はイギリス労働者階級の悩めるボンクラ・アーサー。彼は陽気なオープニングが終わると同時に現れて、いきなり深刻な問題に直面する。彼は、バイパス工事のために一軒家の強制立ち退きを命じられる。抗議しても頑なに無視され困惑しているところに、彼の親友・フォードが現れる。彼は実は宇宙人で、彼が言うには、もうすぐ地球は終わりを迎えるという。

 宇宙バイパス工事のために。

 フォードは全宇宙的ベストセラー「銀河ヒッチハイク・ガイド」の記者だったので、アーサを連れてのヒッチハイクに成功。かくして、地球はめでたく爆破され、アーサは生き延び、彷徨える銀河ヒッチハイカーとしての放浪が始まる。


 …というわけでいきなり、母なる家=HOME=地球が地方行政の都合によって消滅する、という、ありえねー展開から幕を開けるこの物語は、官僚的宇宙人、ヒッピーにしか見えない自称銀河系大統領ゼイフォードと、彼にナンパされてほいほい付いてきた地球人女性でアーサーの思い人・トリシア、鬱病を患ったロボットのマーヴィンたんら、個性的かつボンクライズム溢れる登場人物が入り乱れ、イギリス流ウィットに富んだドタバタコメディが展開する。
 そもそもスペースオペラってのは、地球に住む人類でも理解できるように、地球人にも共感できるような価値観を持ったキャラクター達によって紡ぎ出されるドラマであるが、この映画のすごいところは、小市民レベルにまで人物群の価値観を落としたことにある。よって政治的要素が一切ない。戦争もない。宇宙の平和を守ることもない。主人公も、母なる星を無くしてヒッチハイクしているだけなので、宇宙を変える冒険をせず、ヒッピー大統領の真理探究とやらに付き合うハメになる。まあ、宇宙レベルの自分探し映画だったりするのです。


 く…くだらねええええ(誉めてます)。


 で、なんか映画評や宣伝では、オチが哲学的だとか深いとか言われてますが、どこが?すっげー幼稚な発想を大がかりに映像化していたんで、思わず爆笑しましたけど。というわけで、大変人を喰ったSFコメディです。珍味ですけど、面白いっちゃ面白いんで、良かったらどうぞ。(★★★)