虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

バケラッタ狸地獄

toshi202005-06-06



 「オペレッタ狸御殿」を見てきた。


 まあ、酷い酷いと聞いてはいた。で、まあ、酷いと言われれば確かに酷い。だが、これは鈴木清順の映画を一度でも見たことある人なら、ある種覚悟すべき酷さであって、これは、彼にこんなん撮らせたプロデューサーがどうかしてる。


 話にしてみればなんのことはない。
 織田信長みたいな格好した平幹二郎(ナルシスト)が、息子であるオダギリジョーの美しさに嫉妬して、霊峰なんとか山に放逐する。そこに狸のお姫様であるチャン・ツィイーが現れて、彼を見初める。すぐに二人は相思相愛。だが、森を征服しようとするナルシスト幹二郎が、狸御殿を潰そうとやってくる。ああ、結ばれてはいけない、オダギリとツィイー。哀しき運命の二人。そんな二人の悲恋とその顛末を描いた物語である。


 そんな物語が、歌と踊りの合間に展開するという、娯楽映画として実に素晴らしい企画。なのに、この「心躍らなさ」加減は凄い。こんな単純な話を、シュール&ナンセンスな世界にしてしまう。おそるべきは清順ワールド。
 しかしまあ、清順さんは本当に人間描きたくないんだな、と思う。この人間達の書き割りっぷりはいよいよ堂に入ってしまっていて、片言の日本語と流ちょうな北京語を話すお姫様や、デジタル美空ひばりが出てきても、まったく違和感なく世界に収まるという、半ば奇跡のようであり、半ば冗談のような事態が、スクリーン上に現出する。


 つまり、鈴木清順ファンは見て良し。それ以外は見るな、という映画であり、そりゃお前、いつもの「鈴木清順」じゃねーか、と言われればまったくその通り。蛙の子は蛙。清順の映画はやっぱり清順なのであった、と。チャンちゃん。(★★)