虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

ほんの話。


 しろはた本田透さんの「電波男」購入しました。
 購入したのは日頃楽しませてもらってる餞別みたいなもんですが。で、読みました。


 恋愛至上主義社会におけるオタク、というテーマの本としてはそこそこ面白かったですが、要は「オタクによるオタクの為の自己啓発」みたいな内容で、社会的批評性から遠のいてしまうのは残念かな。
 本田さんの論旨には「社会性」という言葉がすっぽりと抜け落ちている気がする。恋愛至上の資本主義社会は駄目だから、ドロップアウトしてオタクは自己肯定しようぜ、みたいなことを言うわけですけど、本田さん自身が恋愛至上主義叩きに固執しすぎて、オタクの弱点は美徳なんだと言い放って終わりになってしまった感はある。


 イケメンキモメンという差別構造についての見方は面白いんだよなあ。だけどそこから脱却しようとするのではなくて、一発逆転策が「こう考えれば現実女よりもオタクの方が上じゃん、ばーかばーか」という脳内変換ってだけでは、何の解決にもなりゃしない。
 俺は文化ってのは社会的には無駄であり、故に人にとっては価値があると思うけど、文化にべったり生きるのは、それがなくなったときどうすんだ、という話になる。社会がなくなりゃ文化もなくなる、だけど文化がなくても社会は回るのが世界の真実なんでねえ。その儚さが文化の魅力ですけど。
 肉体がなくても、(恋)愛は成立しうる、というのは押井守的だなあ、などとは思ったが、結局それじゃあ社会は回らないし。


 どっかで破綻してるのは本田さんも分かってるんだろうし、それゆえの「電波男」なんだろうけども。いや、本人が薄々分かっちゃってるところが、やはり哀しいとも思うわけですが。オタク優位を訴えれば訴えるほど、オタク優位の道は険しいと逆に実感してしまう奇書。