「ルパン三世/カリオストロの城」ゴート札考
金曜ロードショウで放映された「カリオストロの城」を見ていた。
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ルパン三世が国営カジノの金庫に忍び込み、逃げおおせたものの奪った札がことごとくゴート札という偽金であったことから、その大元の偽金の原版を奪おうとした事が物語の発端である。
ゴート札は主要産業がないカリオストロ公国の、国を支える「経済活動」である。
本編の中でルパン三世が説明するゴート札の概要とはこうである。
ルパン三世「かつて本物以上と讃えられた ゴート札の心臓部がここだ。 中世以来 ヨーロッパの動乱の陰に 必ず うごめいていた謎のニセ金。ブルボン王朝を破滅させ ナポレオンの資金源となり、1927年には世界恐慌の 引き金ともなった。歴史の裏舞台 ブラックホールの主役 ゴート札。」
世界中に流通する精巧なる偽札。それによって得た利益によって、ロビー活動を行い、世界中の首脳とコネクションを持つカリオストロ伯爵。もともとシコシコと一枚一枚丁寧に作り上げてきたであろう偽札つくりを近代化と大量生産体制に切り替えるというやり手経営者である。彼は常にクオリティを自らチェックし、部下に的確な指示を出せる男であり、実務家としても有能である。
ゴート札産業はすごいと思うのは、印刷に少しでも関わっていたらわかると思うけど、クオリティと大量生産のバランスである。銭形警部が国連で証言によれば、公国にあった地下工房は最新の印刷機であったそうだけど、相当な練熟した印刷職人がいなければなりたたない現場である。クオリティを下げずに大量生産するためには常に機械のメンテナンスは欠かせない。印面を汚さずに大量生産することだけでも相当に難しいが、エラーをださない大量生産することは、さらに難しい。その上、かつてのクオリティを維持しなければないのである。
ルパンのような相当の目利きはともかくも、世界中に流通して決してバレないハイクオリティな偽札を印刷機に掛けて作り、なおかつ各国しのぎを削らせているであろう、偽札対策技術すらも越えて流通させるという、その離れ業は相当な熟練した印刷工たちの努力の結晶とも言える。
正直な事を言えば、ルパン三世がちょっかい出さなければ、いやさ、カリオストロ伯爵がクラリス姫を嫁にもらおうとするロリコン伯爵でさえなかったら、彼らはいまも真っ当に(?)偽札づくりに励んでいたであろうことは間違いが無い。
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そもそもは細々とした技術であったろうゴート札づくり。その圧倒的クオリティは他の追随を許さないわけであり、つまるところを言えば、その技術力は他国にいるであろう偽札業者たちはおろか、実際に紙幣を作る国立印刷局すら越える技術力を誇ってきたのである。しかもそれを、近代化させ、印刷機で大量生産させるためには、相当な企業努力があったことでありましょう。彼らを支えているのは、「小国である我らの印刷技術は大国のそれを越える世界一!」という自負でありましょう。
考えてみればゴート札はそういう努力の積み重ねに支えられているのである。たかだか原盤盗んだだけではとうていゴート札の深淵は理解出来ない。
そこには印刷技術者たちの語るも涙の苦闘があったに違いないのである。
ところがルパン一味はこともあろうに、伯爵を初めとする偽札印刷のプロフェッショナルたちが汗と涙で培ってきたであろう利益の恩恵を一身に受け、なにもしてこなかったであろう大公家の娘にたぶらかされて!この「産業」をぶっ壊してしまうわけであるよ!
なんということでしょう!
彼らの無念は如何ばかりでありましょうか!時を越えて伝えられ、そして磨き上げられてきたその印刷技術。その長きに渡る苦闘を思う時、ボクは彼らを思って、涙してしまうのです。
ルパン一味は彼らの技術に対する誇り!仕事に対する飽くなき熱意!そして、連綿と続いてきた伝統!それを完膚なきにつぶしていったのであります!なにが「気持ちいい連中」でありましょうか!
ルパンはとんでもないものを盗んで行きました!印刷職人たちの職を!仕事を!誇りを!
さて。
経営者である伯爵が亡くなり、国連の査察が入ってからのち、彼らの生活はどうなっていくのでしょう。
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職を失った職人達はおそらく国外に移り、偽札対策の技術協力などで生きていくのかも知れません。
また、「カリオストロの城」のラストで観光資源を発見したことから、モデルとなったと言われるリヒテンシュタイン公国のように、切手印刷を生業にするものもいるかもしれません。
偽札づくりは犯罪です。ですが、そこにあった技術者たちの苦闘は本物であったとボクは思っています。
カリオストロ公国にはこういう格言が出来たかも知れません。
「似せるは恥だが役に立つ」
ということで、今回の戯れ言はお開きです。
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