「ミリオンダラー・アーム」
原題 Million Dollar Arm
監督:クレイグ・ギレスピー
脚本:トーマス・マッカーシー
才能が金になる。世界はいつからかそんな理で動くようになった。世界のどこかには、きっと。俺たちの知らない「宝」が今日も生まれては消えていく。
大手エージェント会社時代の「契約」を貯金にして独立したJB・バーンスタイン(ジョン・ハム)はじり貧だった。かつての契約者たちは一線を離れ、新たな契約は大手にかっさらわれた。自宅の家賃を払うお金すらない。
そんな時、ふと見ていた「クリケット」の試合を見ていて思いつく。投げて打つ。「クリケット」の仕組みはどこか野球に似ている。そしてクリケット人口が大きいのは?インドだ。じゃあインドにはメジャーリーグでも通用するすんげえピッチャーがいるんじゃないか。
・・・山じゃーーーーー!宝の山じゃーーーー!ひゃっほーう!いつ青田買いするの?今でしょ!ひとつなぎの大才能を見つけて、エージェント王に俺はなる!
という話。そしてバーンスタインはインドで才能発掘リアリティーショー、「ミリオンダラー・アーム」を開催するに至る。
実話の映画化なのであるが、アメリカ目線であるので、当然ながらインド人の描き方がちょっと「くそー、アメリカの常識が通用しないなんて、こいつら土人だぜ」的な目線がないではないんだが、インドから2人の巨大な才能を見いだしてアメリカで共同生活を始めてからが、この映画の本筋なのだと思う。
アメリカにやってきて、その文化にとまどうインドの「原石」と、野球の指導者志望の通訳青年たちの七転八倒。大手エージェント時代の栄光が忘れられず、ついつい「原石」たちとの交流をおろそかにするバーンスタインが、彼の敷地に家を間借りしている看護婦さんとの交流を通じて、徐々に彼らの中に「人と人」の交流が芽生えていく。
バーンスタインという男、あんまりいい人というわけでもないんだが、ジョン・ハムの演技は彼のいやらしさをあんまり露悪的に見せない力があって、原石たちをどこか「商品」扱いしていた男が、彼らと人として向き合い、彼らの成長に寄り添っていき、やがて成功へと至るという、ハッピーエンドなザッツ・ハリウッド映画の王道を行く物語に、観客は素直に共感できる。
「才能は金になるが、才能は商品ではない。人なのだ。」というごく当たり前の帰結に至っているのであるが、その当たり前を手に入れる過程こそ、重要なのかもしれない。
最近、こういう王道のハリウッド映画というのを久しく見ていなかった気がするので、個人的には大変楽しかった。大好き。(★★★★)
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