2018年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。

toshi202018-12-30



 みなさま、どうも。ご無沙汰をしております。気がつけば年末でございます。
 今年、ブログ更新量はいよいよ、見る影もなく壊滅状態で大変申し訳なく思います。しかし、映画自体を見る量はむしろ上がっておりTwitterでは映画感想をガンガンかいてたりします。鑑賞量はブログを書かない分、過去最多120本を軽く超えておりまして。しかも面白い映画ばかりで、選定作業は難航いたしました。
 というわけで、自分が出会った映画の中から、「良かったな」という映画を10本選ばせてもらいました。「あれがない」「これもない」という方もいらっしゃるでしょうが、ご容赦いただいて、しばしおつきあいくださいませ。

10位「ボヘミアン・ラプソディ

ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)

ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)

公式サイト:映画『ボヘミアン・ラプソディ』公式サイト 大ヒット上映中!
 今年最後に爆発的ヒットを記録している、人気ロックバンド・Queenを扱った伝記映画。
 とにかく映画館で見た回数で行ったら今年一番かもしれない。伝記映画としては構成がいびつな映画ではあり、そして虚実をないまぜにした「フィクション」でもある。そういう意味で毀誉褒貶があるのはわかる。だが、それでも後半20分強を実際のライブ再現に使い、そこにドラマを収束させたのは見事であった。あそこまで「ファン以外の層」に「Queen」の音楽を響かせるクライマックスを作り上げたのは、まさに映画ならではの離れ業だと思う。
 加えて、私の初見が「Queenファンが集結した発声可能上映」というのもでかかった。その体験がとにかく衝撃的で、その出会いのせいで、私は「応援上映じゃなきゃ見れない」体になってしまった。どうしてくれる。とにかく「映画館でこそ見なければいけない映画」として忘れがたい体験でした。
 未見の方は公開中に是非。

9位「タクシー運転手 約束は海を越えて」

タクシー運転手 約束は海を越えて [Blu-ray]

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 韓国・ソウルに住む一介のタクシー運転手が、ドイツ人記者を乗せたことから、衝撃的な事件「光州事件」の目撃者になっていく物語。
 実話を元にしてはいるのだが、主人公のタクシー運転手当人がどういう人物なのか。実は長らくわかっていなかった。そこから想像を膨らませて描いた「フィクション」でもある。政治にまったく興味もなく、デモに対しても辛辣だった「ノンポリ」タクシー運転手が、外国から来たソウルから光州までの「長距離客」をせしめた事から、彼は「自分の国で何が起きているのか」を目の当たりにする。その主人公を肉付けするソン・ガンホの演技がとにかく人間くさく、政治と我々は不可分であることを身を持って教えてくれるのである。
 この映画が韓国で大ヒットしたことで、モデルとなったタクシー運転手の身元とその後の人生が判明した事を含めて、映画の力ってすごいと思わせる傑作であります。
1987、ある闘いの真実 [Blu-ray]

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8位「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書

 ニクソン政権下で作られた、ベトナム戦争を巡る機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在がニューヨーク・タイムズでスクープされたことにより、残りの文書の存在と掲載を巡り、ワシントン・ポストの女性社主の葛藤や編集主幹の不屈の戦いを描いた作品。
 この映画における「新聞」というメディアが「権力」におもねる事なく、戦うことの苦難とその重要性を描いた作品なのですが、とにかく僕にとって衝撃的だったのは、その構成。
 僕の仕事は「新聞の印刷」であります。
 僕は新聞を「書く側」ではなく、「刷って届ける側」であります。この映画は「書く側」のドラマではあります。だが、同時に「日々刷っている」人間に対して最大限の敬意を払ってくれた映画であります。あの「スティーブン・スピルバーグ」が、そんな映画を作ってくれたのです。これが感動せずにはおれますか。
 日々書かれた内容を刷って顧客に届ける。
装填された弾丸が拳銃から射出されたかのように。輪転機が動く。魂を込めた記事が、新聞として刷られていく。その新聞を荷造りし発送する。その新聞が世界を変えていく。
この「刷る」という仕事も日々のたゆまぬ努力によって為されている、書くのと同じくらい大変な仕事なのです。そんな日の当たらない我々の仕事を、こんなドラマックに扱っていただけるとは思わなかった。劇場で嗚咽に近い号泣をしてしまった。とにかくこの作品には「ありがとうございます。」という言葉しかありません。スピルバーグ監督に最大の感謝を。

7位「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル

 ナンシー・ケリガン襲撃事件を起こしたとして、当時世界中に衝撃を与えたフィギュアスケート選手トーニャ・ハーディングが、なぜそんな事件に関わってしまったのか。そこまでの半生を描いた作品。
 優美さを求められる「フィギュアスケート」界において、トーニャ・ハーディングは次々と前人未踏の技を開拓する「技術の天才」であり、彼女のそのハングリーさとある種向こうみずな性格は、母親によって形成されたことが明らかになっていく。そんな「フィギュアスケート」の技術を底上げすることに貢献してきた才能が、なぜ「転落」していったのか。彼女自身の目線から描かれていくのだが。
 その真相はあまりに衝撃的で、劇場で腰を抜かしそうになった。人間って「こんな事」で未来を失うのか。これが「悲劇」なのか。それとも「喜劇」なのか。この映画の物語が事実ならば、そのシナリオを書いた「神」はなんと残酷な事であろうか。あまりの事に「爆笑してしまった」その真相は、是非とも映画本編でご覧ください。


6位「殺人者の記憶法」「殺人者の記憶法/新しい記憶」

殺人者の記憶法 [Blu-ray]

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 アルツハイマーを患った老いた殺人鬼が、若き連続殺人鬼と対決するというスリラーである。
 この映画の白眉は、自分を構成するために必要な「記憶」を徐々に失いながら、最愛の娘のために戦う「殺人鬼」の物語であることだ。「殺人鬼」とはいえ、娘が生まれて以降は殺しをやめて一介の動物医院を営む初老の男なのだが、体力差に加え狡猾さも併せ持つ「敵」に対し、「アルツハイマー」が進行する中で戦わざるを得ない苦闘が描かれる。のだが。
 この映画の「別バージョン」である「新しい記憶」で、実はこの映画の物語に「もうひとつの可能性」が観客に提示される。この二本を見ることにより、観客は「記憶」という実にあやふやで不確かでいい加減な存在に、戦慄することになる。自分の「見ていた」物語はどちらなのか。自分は「何」を見ていたのか。観客を「思考の泥沼」に引きずり込む、恐るべき映画であります。

殺人者の記憶法:新しい記憶 [DVD]

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5位「モリのいる場所

モリのいる場所 [DVD]

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 実在の画家・熊谷守一氏を描いた物語。なのであるが、本作は「伝記映画」ではない。
 30数年自宅から一歩も出なかったと「言われている」熊谷守一氏が自宅でどう暮らしていたのか。彼のとある数日を「スケッチ」した映画で、その自宅の庭がまるで「一個の小宇宙」のように描かれている。「モリ」を演じる山崎努とその奥さんを演じる樹木希林は、本作が初共演とのことだが、まるで長く連れ添った夫婦のように「その世界」にたたずんでおりその演技が実に素晴らしい。
 もちろん「熊谷守一」氏はそこに至るまで様々な苦難を経験してはいるのだが、この映画ではそれは「匂わされる」程度で決して表立って描きはしない。あくまでも二人の老夫婦から見た「世界」に寄り添っている。その視点が実に見事で、沖田修一監督恐るべしと思った次第。

4位「ラッカは静かに虐殺されている


 シリアの内情を国外向けに報道するシリアの市民ジャーナリストのグループについてのドキュメンタリー映画
 今年、シリアで拘束された安田純平さんの事件が記憶に新しいが、シリア内戦とそこでの国内の内情を世界に発信するジャーナリストのグループがRBSS、日本語で「ラッカは静かに虐殺されている」である。
 ISによって報道が統制され、真実を報道できない国がどうなるのか。シリアの内情の一端を描くこの映画は非常に衝撃的だ。
 今、日本では「メディア」の存在は非常に軽視されはじめていて、安田純平さんへの一部で行われた「非難」もそこに端を発している。だが、権力におもねり、真実に切り込むメディアを失った国がどうなっていくのか。彼らが住んでいたかつて美しい都市だった「ラッカ」の無残な姿をそのカメラは捉えている。
 ここに出てくるジャーナリストたちは元々記者ではない。様々な職種だった人々が集い、自らの国の惨状を世界に伝えようと文字通り命がけで戦っている姿を描いている。彼らが伝えるシリアの姿はあまりつらく、見るに堪えない。だが、これは世界が知るべき真実であるのだ。この映画は「メディアが死んだ国はこうなるのだ」という警句でもある。

3位「リメンバー・ミー

 歌を禁じられた家に生まれながら、歌手に憧れるメキシコの少年・ミゲルが、憧れのスター歌手が自分の先祖であることを知ったことから、死んだ先祖に会いに「死者の国」に向かう物語。
 私には弟がいて、私が常に映画館まで行って新作映画を見に行くことに訝しげに尋ねることがあり、そこで私は常にこう答えてきた。「その新作映画の一部が、後に古典になるのだよ。」と。それでも弟は納得してなかったのだが、たまたま本作の試写会が当たり、一緒に見に行った時、見終えた後「ようやく言ってる意味がわかった」と興奮した。本作もまた「古典になりうる新作映画」の一本であります。
 この映画を見た後の興奮は忘れがたい。歌を巡る葛藤の物語、死者と生者をつなぐ独自の世界観、ツイストの効いた脚本、そして圧巻のクライマックス。「忘れようにも忘れられない」映画であります。

2位「パディントン2」

 英文学の古典「くまのパディントン」を映画化したシリーズ第2弾。
 ペルーからイギリスにやってきた熊・パディントンの物語は第1作も非常に面白かったが、第2作は輪をかけて素晴らしかった。時まさに「移民問題」でヨーロッパが揺れる時代に作られた本シリーズは、家族向け映画としても大変優秀ながら、異邦人を受け入れる寛容な社会の重要さを高らかに歌い上げもする。
 ミステリ、アクション、コメディ、刑務所もの、そしてミュージカル。この映画はあらゆるジャンルを横断する。
 パディントンが無実の罪で刑務所に入った事から巻き起こる騒動とその顛末は、彼の人柄に触れて人々を巻き込みながら、やがて奇跡的なハッピーエンドへとつながっていく。多幸感あふれるエンディングはまさに素晴らしく、思わず感涙。まごうことなき傑作です。

1位「悪女 AKUJO」

 父を殺され、暗殺者として育てられた女が復讐の果てに逮捕され、国家直属の女暗殺者として生まれ変わり、新たな人生を始めた事から、さらなる悲劇へと巻き込まれていくアクション映画。
 映画館で見て、一発で衝撃を受けたのはそのアクションである。とにかく「新しい」。オープニングシーンから「どうやって撮ってるんだ?」と思ってしまう壮絶なアクションを観客に叩きつける。
 スタント出身のチョン・ビョンギル監督の目指すアクションは「見たことないもの」への飽くなき探求に満ちている。そして映画で描かれる物語は、激しい情念に満ちている。日本でリメイクされた「殺人の告白」でデビューしただけあり、その物語性も素晴らしい。アクションとドラマが不可分である点も特筆すべきことである。
 激しく、儚く、美しくも切ない。一人の女の「愛」の物語であり、「哀しみ」の物語であり、「狂気」へ至る物語である。
 「誰も見たことない映画」を高い次元で実現した、恐るべき映画だと思います。映画館で見れて本当に幸せでした。